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2011.06.13

「聴覚障害教育これまでとこれから」

ろう学校教諭で、ご自身も聴覚障害者である脇中起余子さんの著書、「聴覚障害教育これまでとこれから―コミュニケーション論争・9歳の壁・障害認識を中心に」を読みました。
私的にはかなりお気に入りの1冊となりました。

脇中さんは、乳幼児の時に薬の副作用で失聴し、聴覚口話による指導とインテグレーションにより一般の中学、高校、大学と通ったいわば、第一言語は日本語の聴覚障害者です。
この本から、ご自身の苦労をいろいろとかいま見ることができます。

脇中さんはご自身の経験や、勤務先での聴覚障害児への指導などを通してご自身なりに考えた聴覚障害児教育について、著書に書かれています。
聴覚障害児教育・・・ろう教育の目的のひとつは日本語の獲得と昔から言われている「9歳の壁」を超えること。

脇中さんは、昔の聴覚口話法が良いと考えている訳ではないものの、明晴学園の行っている日本手話を用いて日本語を獲得させるというバイリンガル教育にも疑問をお持ちのようです。ただ、今後の明晴学園の教育成果をみて明らかな成果があればご自身の考えを改めるということまで書かれているので、現段階でははっきりしたことが分からないので、自分は別の方法の方がより良いろう教育ができると考えているということを明示している点も、読んでいて気持ちが良かったです。

脇中さんが考えているのは、早期に手話を使用した教育を行いつつも「日本語そのもの」に触れることがなければ日本語を正しく獲得できないということのようです。
そのため、日本手話に拘らず日本語対応手話や指文字、キュードスピーチなどを用いて手話で理解できた内容を日本語でも正しく理解できているのかを見極めながら授業をするというものでした。

聴覚障害児に多い、言葉の間違いや日本語のリズムに合わせて覚えることが苦手な子どもが算数の九九を覚える方法で指を使うものなども紹介されています。
また、社会性を身につける為のマンガを利用した自立活動の紹介などもあり興味深く拝見しました。

私は、日本手話で教える明晴学園の存在は日本手話で学ぶことを希望する児童・生徒や保護者の為にも必要だと思っています。
また、日本聾話学校のように残存聴力を生かし日々フィッティングにも配慮して聴覚活用をして手話を使わない学校もあって良いと思っています。そういった教育を希望する方々がいるのですからどちらも否定されず、ニーズが違うのだということで良いと思います。
私学はそうですが、国公立のろう学校はどうでしょうか。

素人の私にはどの教育方法が良いとか悪いとか語るほどの知識も経験もありませんが、手話も使い無理の無い範囲で残存聴力も活用でき、個々のニーズに合わせた教育方法が国公立のろう学校に求められるのではないかと思います。

脇中さんは、繰り返しこの本の中で「日本語の音韻を意識させる」必要性を訴えています。
聴児なら自然と耳にし、身に付く日本語の音韻意識をどのようにろう児・難聴児に覚えさせるかが日本語獲得には大切だというご意見です。

読んでいて気持ちが良かったのは、ご自身の考えを押し付けず「これはあくまでも、1聴覚障害教員の意見なので、鵜呑みにしないように」とまで言い切っている点です。
自分が正しいと言い切らない所に、私は好感を持ちました。

教育方法に確実に万人に通用するものなどないのではないかと私は思っています。
日本手話で学ぶ方が日本語が身に付きやすい場合もあるでしょうし、残存聴力がある場合は口話法が有効なのかもしれません。
昔のろう学校のように、手話を絶対的に禁止し手話を使うと手を叩かれるようなことがあってはいけないと思いますが、それぞれの学校で教育方針をしっかり示して、選べるような環境になるといいのかななんて思いました。


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手話言語・ろう文化」カテゴリの記事

コメント

障害者教育科学実践研究

「教育と労働安全衛生と福祉の事実」をお読みください。
**********************************
http://kyoikkagaku.blogspot.com/
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それ以前の「教育と労働安全衛生と福祉の事実」。途中で作成できなくなりましたので。
よければ併せてご覧ください。
********************
http://kyouikutorouann.blogspot.com/
*********************

投稿: 京都の教師 | 2011.12.10 13:55

sun京都の教師さま
コメントありがとうございます。
ご紹介いただいたブログ、ゆっくり拝見しますね。

投稿: ドシル | 2011.12.11 00:03

脇中さんは、乳幼児の時に薬の副作用で失聴し、聴覚口話による指導とインテグレーションにより一般の中学、高校、大学と通ったいわば、第一言語は日本語の聴覚障害者です。
この本から、ご自身の苦労をいろいろとかいま見ることができます。

脇中さんはご自身の経験や、勤務先での聴覚障害児への指導などを通してご自身なりに考えた聴覚障害児教育について、著書に書かれています。
聴覚障害児教育・・・ろう教育の目的のひとつは日本語の獲得と昔から言われている「9歳の壁」を超えること。
のことに順次アプローチして書いて行きますのでよろしく。

投稿: 障害者教育科学実践研究 | 2012.06.23 00:42

>障害者教育科学実践研究さん
本を読んだ感想は、記事の通りですのでどうぞご覧下さい。

投稿: ドシル | 2012.06.25 08:27

 脇中さんのことは、乳幼児期から大学卒業、ろう学校の教諭になったことまですべて知っています。
 「9歳の壁」問題はブログにも書きました。

投稿: 障害者教育科学実践研究 | 2012.12.03 19:24

sun障害者教育科学実践研究さん
古い記事へのコメントありがとうございます。
脇中さんはまた本も出版されましたね。
ご活躍お祈り申し上げます。

投稿: ドシル | 2012.12.03 20:13

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