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2012.12.04

教科「手話」を作るには。

「聾学校には手話が教科としてあるべきだ」という意見を耳にしました。
日本語を母語とし、話し、読み、記述する私たち聴者が学校教育で「国語」を学ぶように、ろう児にとっての母語である手話も「国語」のように「手話」という教科で学ぶべきだという意見です。

構造改革特別区域研究開発学校設置事業(教育特区)で設置された品川の明晴学園では、確かに教科として「手話」があります。
そして理想としては、教科としての手話があった方が良いだろうと私も思いますし、たぶん私のような素人とは違い、ろう教育に関わっている方々の中には同じように考える教員もいらっしゃるのではないかと想像します。

小泉内閣の置き土産、構造改革の一環である構造改革特別区域研究開発学校設置事業(教育特区)で設置された明晴学園は、日本手話で学べる日本で唯一の聾学校です。教育特区は「構造改革特区法」という法律に基づいています。
明晴学園のように手話で教育する特区もあれば、英語で教育する特区もありますし、小中一貫校という特区申請の学校も少なくありません。株式会社が大学を作れたのも教育特区のおかげです。
そんな教育特区と、一般の公立学校は同じ土俵ではないので、教育特区の学校にできた「手話」という教科を公立学校でも行うには、いくつかの課題があるのではないかと思います。

仮に、ある聾学校の校長が手話に理解があり「手話」という教科を作ろうとしても、今のシステムでは教科として「手話」を作るのは無理だと私は考えています。

もしかすると、多くの聾学校では「総合の時間」や「自立活動」の時間で、手話を学ぶことを取り入れているのかもしれません。でもそれと教科としての「手話」とは大きく意味が違います。

日本の学校教育は、教育基本法や学校教育法、学校教育法施行規則などいくつかの教育に関わる法律等により定められています。
学校で学ぶ内容は、学習指導要領に基づくことは多くの方がご存知かと思います。
平成21年3月告示で、学校指導要領が改正され平成24年度から新指導要領での教育が始まりました。
今回の改正ではゆとり教育からの脱却と、小学校高学年から「外国語」の教科指導が行われることが話題となりました。

そしてすでに平成19年度より、聾学校という学校種ではなくなり特別支援学校となった聾学校を含む、養護学校や盲学校などの指導要領はすべて同じで「特別支援学校」用の指導要領になります。
特別支援学校の小学部の指導要領を例にとると、「道徳」や「外国語活動」「総合的な学習の時間」「自立活動」などは、国語等の主要教科とは別にきちんと明記され指導要領に何を目標とし、どんな内容を学ぶのかが明示されています。
現在の指導要領には当然、「手話」の文字はありません。

また、指導要領以前に学校教育法施行規則には各教科の学習すべき最低限の時間も定められています。
小学校の場合、1年生の国語は306時間(1時間は45分)、6年生は175時間(1時間は45分)。
道徳は1年生は34時間、6年生は36時間...という具合です。
ここに「手話」が組み込まれない限り、教科として「手話」を行うことは現実にはできないことだと思います。

逆に言えば、ここに「手話」があれば日本中どこにでも「手話」という教科が当たり前に行われることになると言えます。ここで決められた時間数を下回ることは許されません。
でも、冷静に考えると「手話」を教科として指導する為には教員免許に「手話」が必要になります。
小学校の免許であれば、小学校の教科指導の中に「手話」が含まれなくてはいけません。

新しくできた教員免許では「福祉」や「情報」があります。
これらと同様に「手話」という教員免許ができれば、中学や高校での教科「手話」を担当できるようになるでしょう。

色々考えると、現状ではやはり厳しいといえるでしょう。
せっかく学校で教わる手話が、対応手話なのか日本手話なのかで議論がおこる可能性もあります。
ろう者の教員だから「手話」を指導できるとは限りません。聴者なら誰でも「国語」指導ができるかといえばそうではないからです。
やはり客観的な教員免許制度が学校では必要になると思います。

これらを実現してとりあえず聾学校に「手話」という教科を設ける為には、障害者権利条約に日本が批准する必要があるのではないかと私は思っています。
批准したあとに、学校教育法等関連法も改正し、大学等の教員免許の種類に「手話」新たに設置する。
そして、教育指導要領も変更し教科としての「手話」が誕生するという流れでしょうか。
または、その逆で法改正をし指導要領も新しくなった後に批准ができるのでしょうか。その辺り、私にはよくわかりません。

ひとつの学校や一教員の力ではどうにもならない大きな動きですが、可能性がゼロではないと思います。
ただ、教科としての「手話」の免許を聴者取得することや、教員免許の取得過程をどうするのか等大きな課題もあると思います。
英語科教員が、ネイティブじゃなくても免許を取得し教科を担当していることを考えると、手話も同様の路線になっていくことが考えられます。
それで良いのかどうかも賛否別れるところではないでしょうか。

個人的には、手話を指導するのはきちんと手話の言語体系を理解し、指導できるろう者が担当するのが良いと思っています。
ただし、その指導力を見分けるのは誰なのかという問題もありますし、人材不足も否めません。

更に、蛇足ですが教科になると教科書検定がつきものですよね。
教科としての「手話」の教科書検定って、どこがどうチェックすればいいでしょうね^^;;

そんなわけで、壮大なことを長々と書いてみました。
教育指導要領は本屋さんでも売っています。
文部科学省が発行していて、だいたい500円前後です。


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